Processing math: 100%

(4)独立

この節のキーワード
  • 独立な事象
  • 確率の積

今回の話は事象の独立についてです。
この概念は確率や統計を考える上でとても重要な概念です。

独立

2つの事象AとBがあったときに、それらが独立であるとは「Aが起きたかどうかということがBの起きる確率に影響しない」と定義することができます。前回の条件付き確率の記号を使って書けば、

p(B)=p(B|A)

ということになります。これに前回の条件付き確率の公式を当てはめると、

p(B)=p(B|A)=p(AB)p(A)p(AB)=p(A)p(B)

という形になります。したがって、つぎのようなことが言えます。

独立

2つの事象AとBが互いに一方の確率に影響を与えないとき、これを独立な事象という。

2つの事象AとBが独立であるとき、それらが同時に起こる確率はそれぞれの確率の積である。
ABp(AB)=p(A)p(B)

サイコロ2つを振る例

具体例を使って考えてみましょう。ここでは大小2つのサイコロの出た目を題材にします。

少々意味不明な例になってしまいますが、2つのサイコロの和をヒントとしてもらった上で、大きい方のサイコロの目を当てるゲームをしているという設定を考えます。

2つのサイコロ、それぞれの目

まずはそれぞれのサイコロの目を「大の目がa」を事象A=1、「小の目がb」を事象B=bなどと書くことにします。

例えば、小の目が1と分かっているとしましょう。
このとき、p(A=a|B=1)=p(A=a)になるはずです。もしp(A=1|B=1)だけが大きい、つまり「ゾロ目がでやすい」といったことがあったらそれは何かイカサマがあることになります。そういうものはないものとして考えます。この場合、それぞれのサイコロの目で何がでたかという事象は独立ということになります。

このとき、それぞれのサイコロにおいて1つ1つの目が出る確率は等しく16とすると、すべての目の組み合わせはそれらの積ですから、

p(A=a|B=b)=p(A=a)p(B=b)=136

となります。

ここでは、2つサイコロという物理的に関係がないものの間の確率は本来独立であるべき、ということから独立性を仮定しました。言い換えれば「本質的に独立な事象」といえるかもしれません。

以下、これをもとに確率を考えます。

2つのサイコロの目の和が6だった場合

次にゲームの内容に入っていきましょう。まずは2つの目の和が6だった場合を考えます。このヒントは大の目の予測にどう影響するでしょうか?ここでは表を使って考えてみましょう。

上の表でマスの中には目の和が書いてあり、色をつけたマスが該当箇所です。これは36個のマスのうち5個ありますから、

p(A+B=6)=536

であり、このときの大の目の出る確率は、a=1,2,3,4,5については

p(A=a|A+B=6)=p(A=aA+B=6)p(A+B=6)=1/365/36=15

であり、

p(a=6|A+B=6)=0

です。したがって、これは元の確率から変わりますから独立ではないということになります。サイコロの目は0にはなりませんから、和が6だとどちらの目も6にはならないということで6が出たという可能性を消すことができるわけです。このような独立でない事象を従属といいます。

2つの目の和が7だった場合

さて、次に目の和が7というヒントをもらった場合について考えましょう。今回も表を出します。

今回は該当箇所が6箇所あります。したがって、途中計算は省略しますが、

p(A=a|A+B=7)=636=16=p(A=a)

です。この場合、ヒントがなかった場合と同じ確率になってしまいます。

このケースではたまたま運良く(ゲーム的には運悪く?)条件付き確率がもとの確率と同じになっています。これは自明ではないですが、計算上独立になっている例といえます。

この節のまとめ
  • 2つの事象が互いの確率に影響を与えないとき独立といい、そうでないときを従属という。
  • 2つの独立な事象が同時に起こる確率は、それぞれの確率の積になる。
  • 独立な事象には、本来的な独立(2つのサイコロなど)なものと、計算上独立になる場合とがある。